毎度、天邪鬼な感想を書いております。そのため、不快に思われる部分があるやもしれませんので前もってお詫びいたします。私のポリシーは「健全な批判は常に重要だが、批判のための批判は意味がない」というものです。なので、少なくとも毎回大河を「楽しみにしている」うちは、感想を書こうと思っております。(批判のために観るようになったら、書くのをやめます・・)。
第3話「謎の男」感想
今回は平安文化が色々な場面にちりばめられており、面白かったです。土御門殿での「赤染衛門先生」による姫達への「授業」も良かったですね。今後「まひろ」(紫式部)の学識がどんな風に披露されてゆくのか楽しみです。
ただ、土御門殿に行くよう勧めた父の動機を知った時のリアクションがなんだか不自然でした。現代ドラマならいざ知らず、この時代父親の力になることは、(知らされていなかったとしても)当然のことだったはずです。また、「間者に」というほど大げさなこととも思えませんでした。父親がずっと不遇な官途を過ごしてきたことは何より娘が知っているはずです。今作では母親の死が、父娘の関係がギクシャクする原因として設定されてきましたが、今回のような描き方はあまり自然ではないように感じました。
また、先日来申しあげてきた「音楽」はどうにも私には合いません。ジャズ風の劇伴がおしゃれと思ったのかもしれませんが、あまりに場に合わない。演技や雰囲気が「雅」なドラマなら逆に合うのかもしれませんが、今作の「今風」の演技に「今風」の音楽では、もう時代劇ではない気がします。
引き続き、気になるのは台詞回しです。どうにも現代的過ぎる。せっかく京の都の文化をテーマにしているのですから、ここを無視してしまうと何が残るのだろうかという気もします。セットや調度品、衣装以上に重要なのは人間だと思います。その時代の雰囲気や価値観は、結局人が醸し出すものだからです。ドラマである以上、現代の私たちにわかる言葉で表現しなければならないのは当然ですが、ここが欠落すると、コスプレをした現代ドラマになってしまうのでは?
道長を演じる柄本拓さんが公式で大石さんの脚本についてこう言っていました。(柄本さんの演技はいいですね!)。
毎回マンガのような感覚で読めてしまうので、ほかの出演者の方々も僕と同じように楽しんで読まれているのではないかと思います。特に藤原斉信役の金田(哲)さんは、「ねぇ最新刊読んだ? めっちゃおもしろくない!?」というようなテンションで話をされますからね(笑)。
NHK大河ドラマ公式サイト「特集」のインタビュー記事より
たしかにこれはもう「マンガ」なのでしょう。「歴史に親しむ」という意味ではよいのかもしれません。しかし、やはり実在した人物を描く大河ドラマなので、面白さや親しみやすさだけでは問題だと思います。
毎回繰り返される、女性たちの「噂話シーン?」も、あまりに漫画チックでなじめません。
これらはもうこのドラマのコンセプトになってしまっているのでしょうから、今後何かが変わるとは思えませんが、せめて紫式部が表現した世界観や、その背景が描かれることを期待しています。
「吉高」紫式部については、賛否両論あるようですが、私は今のところ意外に悪くないのではと思っています。年齢を経て行くとともにどんな風に描かれるのか楽しみにしたいと思います。
それにしても「謎の男」は誰?
セットの話
最近の大河のセットは、かなり予算を節約していると言われますから、やむを得ないのかもしれませんが、やはり「セットです」という感じが出てしまっているのが残念です。もちろん、その中で最善を尽くされていることは、公式連載の「特集」からもうかがえます。
為時の屋敷や東三条殿、土御門殿など様々な工夫を凝らして作られたようです。全体的に「暖色」を使用しているのは、ドラマでもよくわかりました。ただ、調度品や小道具の完成度が非常に高いのに対して、セットはやはり見劣りがします。
これは自然光とは違う室内セットの問題もあるのだとは思います。歴史的な建物そのものを使用するようなロケも日本ではなかなか難しいでしょうし。
公式の記事によれば、大きな木材の使用が予算的にも難しかったようで、職人さんが削った木の柱の型を作ってエラストマー素材で作成されたとのこと。いろいろ工夫・苦心されていることがよくわかりました。ただ、それでもやはり質感が「作り物」という感じがしたのは残念でした。
今作は、様々な撮影施設が使われているようですが、「えさし藤原の郷」の公式サイトには2023年に撮影で使用された旨書かれていました。
日本では、かなり古い町並みを体験するような施設は意外に少ないですので、撮影セットや精巧に再現された町並み、そして観光とがうまく融合するような施設が増えるといいなと思います。(これは経営がペイするかどうかの問題もありますね)。
お隣の中国では「横店影視城」、「襄陽唐城影視基地」等の大規模撮影施設が、秦漢・明清などの都城や町並みそのものを再現していて、多くの名作が生まれています。これらの施設には、撮影全般に関わる施設が併設されている一方で、観光と一体化した宿泊娯楽施設にもなっています。これらが映像の質感に貢献しており、撮影側としては一から作成するよりも安価に撮影ができるというメリットがあります。(ただ、中国の今後の経済状況がこういった大規模施設にどんな影響を及ぼすのかも注目したいところです)。
欧米で言えば、大作「ゲーム・オブ・スローンズ」(GOT)の撮影では、クロアチア、アイルランド、スペインなどの名所旧跡が使われたようです。日本とは違って石造りの文化故に、古くから残る物が多いのが有利な点でしょう。GOTの場合は、各話数十億円などとも言われる巨額が投じられているので、次元は違いますが、歴史的な建造物が多く残るのは撮影には有利な環境だと思います。
公共放送のNHKですから、湯水の如く予算を使えるわけではないのはよくわかりますが、せっかく受信料を払っているのですから、ロケや観光資源として残るような「セット」を(屋内でも屋外でも)残すのもいいのかなとは思います。もちろん、作ったはいいけれど、閑古鳥が鳴くというようなこともありそうですが。
まとめ
いろいろ勝手な感想を並べましたが、スタッフさんたちは予算の範囲で最善を尽くしておられると思いますので、その点は敬意を払いつつ、今後も拝見して行きたいと思っています。楽しさだけではなく、日本の文化や歴史を学ぶ機会としての大河を期待しております。
ともあれ、引き続き、次回を楽しみにしています。
お勧め参考書:
歴史監修の倉本氏の著書。