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大河ドラマ「光る君へ」第1話感想

源氏物語絵巻橋姫 光る君へ

大河ドラマ「光る君へ」の第一話を見終わりました。見終わって感じたのは、今回の大河は、ここ数年とは若干違うものになるのかなということです。もちろん、平安時代というのは珍しいわけですが、そうではなく、主人公の性質というか位置づけが若干特殊だと思うのです。

紫式部は「源氏物語」や「紫式部日記」などが有名で、紛れもなく実在の人物ですが、生没年も明確にはわかりませんし、人生の多くの部分は謎に包まれています。(もちろん分かることも多いけれど)。そう考えると、彼女を主役にするということは多くの部分をフィクションで描く必要があるということでもあります。(そもそも大河はフィクションとも言われてきましたが)。

したがって、この大河ドラマは、藤原道長を中心とする史実の朝廷絵巻の中に、フィクション性の高い紫式部というキャラクターが配されることになります。日記や多くの記録が残っている道長の人生に、「まひろ」としての紫式部がどうはまって行くのかが、このドラマの楽しみな所です。

毎度大河では史実論争がありますが、紫式部については分からないことも多いために、逆に自由度が高いとも言えます。従って、彼女について「史実」を語るのはなかなか難しいと思われます。(ドラマでも研究でもそこを膨らますのが面白いのでしょう)。一方で、道長や朝廷についての物語は、大いに史実論争をするのがいいと思います。分かっていることも多いのですから、ドラマだと言ってもその部分は健全な論争や批判があってよいのではと思います。

若干ネタバレがあるので、少し間を開けます。

光る君へ 前編 NHK大河ドラマ・ガイド

初回の全体的な感想

まずは感想を。

なかなか面白かったと思います。何より子役の落井実結子さんの演技が良かったですね。前述の通り、あくまで虚構と史実の融合であると思えば、今後が楽しみでもあります。

また、朝廷の除目を始めとする歴史上の要素についても、ナレーションで(是非はあるでしょうが)きちんと説明してくれるのも悪くはないと思います。今後も、朝廷側については是非史実ベースで、当時の歴史を説明・再現していただきたく思います。

天邪鬼な私見

天邪鬼なたちで、いろいろ(わざわざ)言いたくなってしまうのが悪い癖です。単純に楽しめばいいのですけれども。

オープニングと劇伴

個人的には(あくまで好みではありますが)、どうも今回はなじめません。オープニングは、かなり既視感(既聴感?)が強く、ドビュッシー(ラフマニノフ)?に似た感じもあり、親しみやすいという意味ではちょっと残念でした。(反田氏のピアノは凄くいいですが)。

特に劇伴は、どうにも「洋風」というか「おしゃれ」というのか、平安絵巻には似つかわしくない気がしました。私は大河では「平清盛」の吉松隆氏の音楽が、今でも大好きです。吉松氏の音楽も、和洋混合でかなり振り切った曲もあるわけですが不思議とマッチしていました。あのようなレベルの音楽が欲しかったなと勝手ながら思いました。

「清盛」ついでに申しあげますと、劇中で流れた舘野泉氏の「アヴェ・マリア」も泣けました。本作に関係ないですが貼っておきます。

横道にそれました。

まだ全てのOSTを聞いていないので、判断は時期尚早ではありますが、ちょっと不安要素です。

キャスティングの年齢

それから、キャスティングの年齢問題も感じました。これは役者さんの力量不足ということではまったくなく、純粋に年齢(設定)の問題についてです。例えば、今回藤原詮子(吉田さん)が入内する話がでてきましたが、確か当時彼女はまだ15,6才ぐらいだったと思います。(亡くなるのは40才ぐらい)。兄の道隆(井浦さん)もこの当時20代で、亡くなるのも40代です。なので、若干キャストの年齢が高すぎる気がします。高齢になるまで演じる役ならまだいいのですが、上記の人達は比較的早く亡くなるわけですので、やはり違和感がありました。繰り返しますが、これはあくまでキャスティングした制作側の問題であり、役者さんの問題ではありません。(役者さんたちの演技には期待大です)。

映像のチープさ

これは予算の関係でやむを得ないのかもしれませんが、せっかく受信料を取っているのですから、もう少しお金をかけてもいいのではと勝手ながら思います。(これは国民の総意がないといけないのでしょうけれど)。

最近の欧米の歴史ドラマや中国の歴史ドラマの質は大変向上しています。(もちろん作品による)。中国に関して言えば、国内に大規模な歴史ドラマ撮影用の施設(都城や町並みそのもの)が建設されており、映像が極めてリアルなものになってきています。(世界最大と言われる「横店影視城」など)。日本では歴史ドラマのニーズが低いということもあるのかもしれませんが、撮影施設の充実が望まれます。(費やす予算の桁が違うのもありますが)。難しければ、もう少しCGの質を上げてほしいです。

屋外のシーンで思ったのですが、どうも歴史的な雰囲気がしないのです。なぜだろうと素人なりに考えたのですが、私なりの結論は「建物」や「物」が映っていないことにあるのではと思いました。廃屋でもいいですし、寺院の屋根でもいいのです。そういうものが映り込むと、途端にタイムスリップした感じになるのではと思います。もちろん、専門家が撮っているわけなので釈迦に説法ですが。

脚本は

脚本はさすが大石さんというところ。大石さんの大河は「功名が辻」以来ですが、当時の評価はまずまずだったのではないかと記憶します。(歴代視聴率では真ん中ぐらいだったかと)。「功名が辻」はある意味「正統派」っぽい大河だったイメージがあり、好きな作品です。

ただ、今作第一話では、ちょっと台詞や発想が現代的過ぎるかなという不安は感じました。また、1話ラストの展開は、劇的という意味ではいいのでしょうけれど、「まひろ」の全人生の行動に影響を与えるので、どうなのだろうかという気がします。(もちろんそれを狙っているのはわかりますが)。しかも、彼女の娘藤原賢子の最初の夫は道兼の息子ですから、このあたりどう説明するのだろうかとも思います。

とりあえずは様子見でしょうか。

今作に求めること

色々勝手なことを初回から言いましたが、もちろん大いに期待しています。最初にも申しあげましたように、今作の「まひろ」たる紫式部は、極言すればあくまでフィクションと考えていますので、彼女が平安という時代の中でいかに生き生きと描かれるかを楽しみにしています。

彼女の生きた歴史的な足跡は、その多くを彼女の書いた作品に依拠しています。当時の女性としては、珍しいことです。同時に、当時の公家達の日記などから分かることも多いようです。最近youtubeでアップされていた歴史考証の倉本氏のお話(動画前半)は、紫式部の足跡をたどる、なかなか面白いものでした。

私が大河に求めたいのは、その時代の雰囲気や価値観の再現でです。その時代の人達がどのようなことを考えて生きたのかを今に再現してほしいと思います。今回は、遙か昔の平安中期ですから、むしろ今の日本人との乖離を表現するのも面白いのではとすら思います。話の多くがフィクションになるのは時代的にも当然と思う一方で、せめて「雰囲気だけは」とも思うのです。

公共放送なのですから、(視聴率も大事でしょうけれど)面白さだけではなく、その時代のキャラクターが生き生きと表現されることに重きを置いていただきたく思います。

まだ、始まったばかりのドラマですから、いろいろ決めつけるのはよろしくないと思います。演出の方が、「劇中劇はやらない」と言っていたことには大いに賛成です。きっとその方がリアルな話になると思います。

以上、勝手な感想を書きましたが、第一話は最後まで楽しんで見ることができました。今後に期待です。


ちなみに、過去に作った相関図はこちら


前述の時代考証の倉本氏は、個人的にはドラマの感想は書かないと仰っています。それも一つの見識かなと思いました。講談社の現代新書のサイトで、引き続きこの時代についての連載があります。