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大河ドラマ「光る君へ」総集編感想

源氏物語絵巻橋姫 光る君へ

全体の感想は既にまとめましたので、ここでは総集編についてのごくごく簡単な感想を最後に。

総集編は全体としてとてもよく出来ていたと思います。むしろその人生が殆どわからない紫式部を描くならこのくらいの分量が自然だったのかもしれません。とはいえ、一方でパートナーの道長の人生は多くの記録があり、歴史上の「重要人物」でもあるので、それを描くとなればまさに「大河」ということにもなります。そう考えると、「まひろ」こと紫式部はこのドラマのガイド役という感じもしました。

「振り返り」の形式で始まったのもよかったです。本編もこういう形で描いてもよかったのではと思いました。「長恨歌」から始まるのも才女としての「まひろ」をよく表現していました。

倫子との「対決?」が、「あるべき」位置に来たのはよかったです。脚本の大石さんもドラマ制作上の都合でラストになったと言っていたので、総集編での変更はよかったと思います。

太宰府篇をカットしたのもよかった。そもそも無理があった設定でもあり、歴史上の重要事項である「刀伊の入寇」を入れざるを得なかったという感じでしたので。

前回批判したラストの「嵐が来る」が変更されたのもよかったです。それに変わって以前の24話感想で取り上げた歌が出てきました。24話の感想を書いた際には、この和歌や関係する出来事がほとんどスルーされたことを批判しましたが、今回最後の最後に登場したのでとてもうれしかったです。(詳しくは以下の記事をご覧下さい)。

めぐりあひて見しやそれともわかぬまに くもがくれにし夜はの月かげ

『紫式部集』実践女子大学本。※陽明文庫本では「月かな」

『紫式部集』冒頭の歌で正確にはいつ詠まれたかはわかりませんが、若き日の友との離別(おそらく死別)を詠んだと言われます。諸説ありますが、おそらく『紫式部集』編纂時に過去を振り返って詠まれた(あるいは改作された)と思います。正確な時系列は不明ですが、彼女が自分の人生を振り返りつつ自薦した歌集(他薦説もあり)であるとすれば、これから次の物語が始まるとも言えます。その意味で、総集編のラストは大変魅力的な終わり方でした。

「天邪鬼」を発揮してたくさん批判もした大河でしたが、「その時代」と「紫式部」を魅力的に描いた作品でした。これを機会にさらにこの時代に注目されるようになればと思います。


紫式部と藤原道長 (講談社現代新書)
講談社
無官で貧しい学者の娘が、なぜ世界最高峰の文学作品を執筆できたのか?後宮で、道長が紫式部に期待したこととは?古記録で読み解く、平安時代のリアル