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中国ドラマ「慶余年」【レビュー3】人物考察~その他編

中国ドラマ

2024年に他ブログで書いた記事の引っ越し版です。再掲にあたって再編しております。
本記事はドラマ「慶余年」第1季と第2季のレビューです。

前回に引き続き、原作とドラマを比較しながらの登場人物考察です。前回は主要人物の范閑と母葉軽眉についてまとめましたが、今回はそれ以外の人たちを簡単にまとめます。多くの登場人物がいるため、未記載の人物も多いです。特に「物語の結末」や「各個人の結末」に関してはあくまで原作で補っております。ドラマ第三季に大きく改変される可能性がありますので、ご注意ください。

引き続き。以下かなりのネタバレあり。また、貧弱な中国語力故の誤解の可能性もあり。ご注意くださいちなみに目次が非常に長いので、必要に応じて閉じてください。

【朝廷関係】

慶帝(四大宗師)

范閑の実の父親。慶国皇帝。彼の父誠王は帝位には遠かったが、都の混乱時に葉軽眉が誠王の兄たちを狙撃銃(バレット)で狙撃して暗殺した結果、父が帝位に就いた。彼も皇太子となり後に帝位を継いだ。原作では非常に複雑な人物。范閑への愛情はあるが、自らの前に立ち塞がるものは容赦しない。天下統一を目指している。葉軽眉殺害の真の黒幕である。動機は彼女が脅威となった(と考えた)からであり、以来五竹と「箱」つまり「狙撃銃」の行方を恐れている。そのため、慶帝は暗殺を恐れてめったに宮殿から出なくなった。

最終的に彼が四大宗師のうち謎に満ちた最後の一人であることが明らかになる。葉軽眉が与えたのは「無名功訣」上下二巻(「覇道真気」「王道真気」)。この修行中に廃人になりかける事故を起こしているため、大宗師になったのは他の3人より遅い。

最後は范閑の反乱時に五竹に殺害された。原作では、人間は「男・女・皇帝」に分けられると言われ、皇帝の孤独や特殊性も強調される。

皇太子(李承乾)

実際には三男だが正妻(皇后)の子なので皇太子となる。ただ、皇后一族はかつて葉軽眉とその関係者を殺害した経緯があり、父帝と母(皇后)の関係性は悪い。(皇后の一族は葉軽眉殺害の数年後に罰として族滅されている)。原作での皇太子は遊び人だが悪い人ではない。(ドラマは狂気を隠している雰囲気)。皇帝の意向で常にプレッシャーをかけられて来たため、廃嫡と二皇子におびえている。長公主とふさわしくない関係にあったことで、皇帝の怒りを買い反乱を起こす。反乱後廃嫡され、後に自害。

大皇子

母は寧才人。母が東夷人で側室のため、長子だが皇位継承はできない。真面目な人格者。大皇子と范閑とは最後まで協力関係にあった。最後は東夷に駐屯する。母の寧才人は陳萍萍に救われた東夷人で、そのため陳萍萍を慕っていた。その後重傷を負い退却する慶帝を看護をしたことから慶帝が横恋慕して側室とした。(この退却の際、陳萍萍は馬の尿を飲んで自らの飲食物を皇帝に捧げ護衛したにもかかわらず・・)。宮廷で寧才人の立場は悪かったが、葉軽眉が彼女を保護したことから葉軽眉の恩を忘れておらず、大皇子と共に范閑に理解がある。

北斉大公主

大皇子の正室。北斉皇帝の兄弟で長公主。必ずしも友好関係には無かった両国の架け橋として嫁ぎ、夫婦仲も良好。ただ、慶国の世論は北斉嫌いであるため苦労する。非常に賢い人物であり、范閑を夫と共に最後まで支持する。ドラマ第二季で登場したが、後半ほとんど出演せず。(毛暁彤の演じる大公主もなかなかよかったので、残念)。

二皇子(李承澤)

ドラマでは范閑との確執が終始描かれるが、原作では後半で対立。彼は才能もあり優秀な人だったが、皇帝に「皇太子を磨く砥石」として利用された結果、追い詰められて挙兵。妻方の葉家が裏切り挙兵は失敗。幽閉後自害。

遺書には皇帝を罵る「鰥、寡、孤、独」の四文字があった。「鰥寡孤独」は『孟子』などに見え、「男やもめ、やもめ、孤児、老いて子のない者」をさす言葉。(寡は本来寡婦をさすが、ここでは親しい人がいないことを言っているよう)。父皇帝の孤独を嘲った言葉であるが、彼の死後の出来事はこの言葉が真実であることを予見しているかのようである。

三皇子(李承平)

原作ではかなり若い。母の宜貴嬪は范閑の義理の母の姉妹であるため、范閑とも関係性が深い。8才のとき、范閑の弟と売春宿を経営してあくどいことをし、范閑に激しく叱責される。ドラマでは「知らなかった」というような設定になっているが、原作では死者を出すなどかなりあくどいことをしている。その後悔い改めて、范閑に師事。江南にも随行する。後に皇帝となるが、最後まで范閑を師として敬った。

長公主(李雲睿)

慶帝の妹。范閑の義母であり主要な敵の一人。子どものころは葉軽眉の崇拝者だった。最後まで葉軽眉の影を追い、彼女を追い越す存在になるべく努力したが失敗し、反乱後自害した。皇帝は妹の数々の企みを許し続けたが、皇太子との不義の関係については許さなかった。

原作の長公主は30才ぐらいで、様々な男性を魅了した。

靖王

慶帝の弟。名前は李治。(排行が本来「雲」のはずなので実名は李雲治か)。長公主の兄と思われる。葉軽眉と親しかった。そして、彼女の死についての秘密をいくらか知っている。原作の後半ではかなり重要な人物。慶帝とは仲が悪いが、普段は出仕もせず政治にはほとんど口を出さない。しかし、後半では范閑の支持者のひとりとして行動する。(そのために皇帝と怒鳴り合いもする)。

原作ではこの人の年齢設定に矛盾がある。「葉軽眉殺害事件の当時子供で皇太后の元にいた」と証言しているが、そうなると現在彼は30代ぐらいということになる。しかし、息子の李弘成は范閑よりも年上であり、後の部分では息子の弘成は「もう30になる」とあるのと明らかに矛盾する。(親子が同じ年齢なはずはないので)。著者は、この点を第6巻で説明しており、靖王は30代で長公主の兄とのこと。したがって、息子の弘成は30というのは間違いで、范閑より数才年上という感じだろうか。

李弘成

靖王の息子(世子)で、范若若をストーキングしている。勅命により范若若と結婚を命じられたが、妹が望んでいないことから范閑が妨害。范閑とは友人関係にあったが(ドラマでも一緒に遊び歩いているが)、結婚問題や二皇子とも仲が良かったことなどから、范閑との関係は複雑になる。遊び人だが性格が良い人で、後半では西方戦線で将軍として活躍。最後は名医となった范若若を追いかけて去る。(范若若もまんざらではなくなった様子)。

洪四庠

現在太后の宦官で、古くから皇帝の信頼が非常に篤い。四大宗師の内、宮殿の宗師は彼だと思われていた。しかし、実際は皇帝が彼を隠れ蓑にしていた。

ドラマ第二季で登場しなかったのが残念。原作では「懸空寺暗殺未遂事件」でも登場する。ドラマでは皇帝が彼を事前に遠方へ派遣しているため不在という設定になっているが、原作では彼は縣空寺の別の階にいたため、皇帝護衛に間に合わなかった。

最後は、四大宗師の決戦で皇帝を守って死んだ。したがって、おそらくドラマ第三季では再登場すると思われる。

太后

皇帝の母。彼女は葉軽眉を嫌っていたが、范閑については(気に入らないとしても)かわいがってきた孫の婿であることや皇帝の血筋であるゆえに尊重していた。そのため、長公主が范閑に手を出すことを不快に思っていた。だた、原作後半で范閑がもたらした皇帝の遺勅(実際は死んでいなかったが)を意図的に無視したたため、范閑とも決裂した。結果として皇太子反乱の際に范閑に殺害された。(薬物を投与し自然死に見せかけた)。これによって、二皇子が遺書で皇帝を「孤」(みなしご)と嘲ったことが実現した。

燕小乙

宮廷の侍衛であり、長公主の側近だった。大宗師に次ぐ使い手のひとり。第二季に出てこなかったのが残念。(皇帝によって地方に飛ばされたからか)。原作では、范閑との決戦時に狙撃銃(バレットM82)で死亡。彼が最後まで范閑を憎んだのは、息子を范閑に(実行は王十三郎)殺されたため。

秦業

武官の重鎮で実は武術の達人。皇帝の信頼も篤い。ドラマでは武官筆頭であるが椅子に座って寝ていた人。実は彼が葉軽眉殺害の実行犯。皇帝の意向を汲み、葉軽眉を排除したい皇后一族を支援した。その後、彼はずっとこの件を秘匿した。(息子も知らなかった)。後に皇太子を支援して反乱を起こすが、葉重らが寝返って最終的に失敗、范閑に殺された。ただ、この全ては京都を留守にしていた皇帝の策略だった。葉軽眉の死の真相を知る秦業一族を始末したかったためであった。

葉重

大宗師に次ぐ使い手。京都守備。葉霊兒の父。大宗師葉流雲の甥。皇太子と長公主の反乱の際には、范閑とともに秦業を殲滅した。度々皇帝に疑念を持たれるが、葉流雲とともにうまく立ち回り忠誠を認められる。

葉霊兒

林婉兒の親友。葉家の息女。婉兒を「姉さん」と呼んでいる。原作の彼女は、范閑と出会った当初は反目しあうものの、後に范閑の武芸に敬意を抱き、范閑を「師匠」と呼んでいるドラマ版は原作とはかなり違い、范閑との関係はドライである

勅命によって彼女は二皇子の妃になり、二皇子自害で寡婦となる。その後、葉家の軍に戻り戦線で活躍する。そこで再び范閑に再会するが、その際も「師匠」と呼んで涙している。夫と范閑の反目があり、葉家が二皇子を支持していたことから、一時范閑とは疎遠になるが、最後まで尊敬の念は変わらなかった。

葉流雲(四大宗師)

四大宗師の一人。四人のうち最年長と思われる。「流雲散手」の使い手。彼の武術は唯一葉軽眉に由来しない。ただ、五竹との戦闘で悟りを開いて大宗師になったので、影響を与えたとは言える。彼は慶国の人間であるが、皇帝が十分に強いので世事には関わらない。彼はあくまで葉家の守護者である。四大宗師の決戦の際には慶帝に協力して他の大宗師を破った。

最後は費介とともに、海外へ去る。姓は「葉」であるが、葉軽眉との関係性はない。

【范家】

范建

主人公の育ての親。彼は純粋に父親として彼を愛している。ただ、その根源はやはり葉軽眉への敬愛である。慶帝よりも年長。彼は自分の子どもを犠牲にして、范閑を守った。(実の子を身代わりに殺した)。その結果、最初の妻(范若若の母)は心を病んで死んだ。

彼は范閑が富を得て平穏無事に生きることを望んでいた。彼は戸部(財政担当)の人間のため、財産の重要性を高く評価している。林家との結婚は当初反対していたが、最終的にはそれによって「内庫」を取得し、富貴を得て一生を送ることを願った。最後は故郷に隠退する。

范若若

范閑の異母妹。范建の正妻(故人)の娘。そのため、後妻である柳如玉も彼女には遠慮がある。かつて兄(赤子)が范閑の身代わりに殺されたことを知っている。范閑と子ども時代から交流があり、現代的な価値観を教えられているため、李弘成との結婚にも否定的だった。李弘成との結婚から逃れるため、范閑によって北斉苦荷の弟子とされ、医学を学ぶ。(海棠の妹弟子となる)。一代の名医として名を馳せる。

最後の范閑の反乱では、密かに狙撃銃で皇帝を狙撃した。(五竹の訓練による)。

范思轍

范閑の異母弟。范建の後妻柳如玉の息子。12才の時に売春宿を経営してあくどいことを行ったため、范閑に激しく体罰で懲らしめられた。重罪にあたるため、北斉へ逃がされ商売をするよう命じられる。(ドラマでは彼らは売春宿の悪行は知らなかったことになっている)。その後改心して優秀な商人となる。原作ではさほど頻繁には登場しない。

高达

范閑の父范建の私設特殊部隊「虎衛」の将。武芸に秀でる。王啓年と同じ時(宗師大戦時)に「逃亡罪」に問われる(当初戦死扱いだった)が救われ、最後まで范閑に従う。ちなみに、彼の名は中国語でいう「ガンダム」。

荆戈

ドラマでは第二季から登場。黒騎の副統領。本来黒騎は鑑査院院長と皇帝だけにしか従わないが、京都の混乱で范閑が失脚した後も范閑に従い続ける。武人だが知的な人物。(ドラマでは范閑のファンというオリジナルプロットがある)。名前の「戈」は范閑の命名。元々秦家の軍にいたが、殺人事件を起こし逃亡して黒騎に迎え入れられた。秦家とは敵同士で凶状もちのため、仮面をかぶっている。

王啓年

范閑の最も信頼する古参の部下。40代で家族を愛する男。軽功の名手で、逃げ足も驚異的に速い。啓年部隊を指揮する。後に皇帝が宗師たちと戦った決戦時に離脱したため「逃亡」とみなされて追われることになる。范閑によってかくまわれ、引き続き密かに活動する。

史闡立

范閑の門下生。(科挙で言うところの子弟関係)。四人の弟子の中では唯一科挙に及第できなかった。ただ、その後范閑の腹心となり、包月楼を経営しつつ国外での諜報活動をおこなう。最後まで范閑に従った。(桑文の夫となる)。

洪竹

宦官。洪四庠死亡後、頭角を現す。洪四庠とは実際に関係はないが、名付け親なのかも? 皇帝との関係は非常に複雑だが、基本的に信頼された。范閑とは反目を演じたが、実際は范閑のために動いていた。最後は范家の管家(執事)として仕える。

林婉兒

范閑の正妻。父は宰相林若甫で母は長公主。非常に美しい、原作者理想の女性とのこと。深窓の佳人であり世事に疎かったが、結婚後は范家を立派に取り仕切るようになる。全体的に原作ではドラマより影が薄い女性

彼女は林宰相の私生児のため、公には生活出来ず、宮中で育った。そのため、父親とも二人の兄とも実はかなり疎遠。(ほとんど会う機会もなかった)。ドラマは兄弟仲がよいように描写するが、無理がある設定。ドラマでは次兄が五竹に殺害されたことを知って、范閑を殺そうとするシーンがあるが、原作にはこのような描写はない。そもそも兄とは疎遠なので、一番真相を知りたかったのは跡継ぎを殺された父林宰相であるのが自然。兄の死亡は、范閑暗殺未遂事件(牛欄街襲撃事件)の首謀者と一緒にいたところを巻き添えを食ったという出来事だった。ドラマのように、兄の敵討ちを考えるような背景はないし、彼女の本来のキャラ設定からもドラマの描写には違和感があった。(彼女は夫を全面的に信頼している人なので)。

林婉兒は、宮廷で育った封建制社会の人間の象徴でもある。そのため、海棠や妹の若若のような自由な考え方は持っていない。彼女にとって最も重要なのは子どもをもうけることであり、そのために自分の健康(持病があった)を害してもかまわないとも思っている。後に長男を産む。

林若甫

林婉兒の父で、范閑の義父。元々寒門の出で貧しかった。愛人長公主の支持で宰相に上り詰める。当初范閑と娘の結婚には反対していたが、次男林珙が殺害されたことで跡継ぎを失ったことなどから、范閑支持を決意し結婚に同意する。(原作では北斉から帰還後に結婚する)。その後、息子の死の遠因が長公主にあったことから長公主と決別し二人の反目が始まる。

彼は清濁併せ飲むタイプであり、政敵も多かった。長公主の攻撃の対象となり弾劾される。その際、長年の盟友であり参謀であった袁宏道の裏切りにあっている。袁宏道は長公主のスパイだったが、実際はさらに遡って鑑査院が仕込んだ二重スパイであった。大局的には、范閑を重用するようになった皇帝が、権力バランスを取るために機会を捉えて岳父の林若甫を排除したということ。隠棲後、故郷では引き続き大いに尊敬されている。原作では、ドラマほど重要な役割を占めていない。(この点ではドラマの描写は素晴らしかった)。

柳思思(ドラマ未登場)

側室。数歳年上の最古参の元下女で、子供時代からの付き合い。最初に長女を出産する。天真爛漫で忠実な女性。

五竹

神廟のロボット(使者)。見た目は15才だが年齢不詳。(万単位か)。ひたすら葉軽眉とその遺児范閑を守り続けてきた。名前は葉軽眉が名付け、弟のようにかわいがっていた。葉軽眉は、彼の中には人格が形成されつつあることを指摘している。

この世界では唯一大宗師よりも戦闘能力が高い。それゆえにも、慶帝が唯一恐れる人物。(それと「箱」=狙撃銃の再出現を恐れている)。そのため、五竹が護衛している以上不可能であった葉軽眉の殺害は、皇帝と神廟の共謀により葉軽眉の元から五竹を意図的に引き離すことで可能になった。

物語中では多くの場面で記憶に障害があったり負傷している。これはおそらく、本来の彼の記憶や強さが「万能過ぎる」ため、そのままだと物語のバランスがくずれてしまう故の設定と思われる。

范閑が都に来てからは、共にいることは少ない。最後は、范閑反乱の際に体を破壊されながらも皇帝を殺害する。

【鑑査院】

陳萍萍

范閑のもっとも強力な守護者。葉軽眉への絶対的な忠誠心と敬愛を持っている。ドラマで彼は、「富は砂上の楼閣である」と述べており、(范建とは違って)富貴よりも権力が保護になると考えている。そのため、葉軽眉が創建した「鑑査院」を受け継ぐ方が身の守りになると信じている。

彼は若い頃、いやしいとされる宦官だったが、葉軽眉は彼を人間として扱い尊重した。「萍萍」という名前も彼女が命名した。この若き日の想い出が全ての原動力になっている。北魏(後の北斉)の肖恩捕縛作戦の折に両足を負傷し歩行ができなくなった。(葉軽眉は自ら設計した車イスを彼に贈った)。

彼の初恋は大皇子の母寧才人。(第一季24話で登場)。宦官とはいえ両思いだったが慶帝が引き離して自分の妃にした。こういった経緯から大皇子は陳萍萍を敬愛している。

最後は葉軽眉の仇を取るため慶帝を殺害しようとするが未遂に終わり、凌遅処死となる。

影子

かつては、四顧剣の弟。四顧剣が一族を皆殺しにした際に唯一弟を許した。影子はそれ以来四顧剣を仇として追っている。現在は慶国「鑑査院」の幹部。のちに、范閑の忠実な部下となる。

言冰雲

范閑の部下。最後は「鑑査院」を率いることになる。基本的に范閑に忠実であるが、慶国の利益をもっとも優先する点で異なった決定も下す。北斉で諜報作戦中に長公主などの情報漏洩で捕らえられる。范閑の活動によって帰国を果たす。

范閑を刺殺する「偽装死」の話はドラマオリジナルで、原作にはない。

言若海

「鑑査院」の幹部。言冰雲の父。彼はずっと昔鑑査院から秦家の軍に送り込まれたスパイだった。息子の言冰雲は范閑の優秀な部下であったが、基本的に慶国の利益を優先する。しかし、言若海は陳萍萍にどこまでも忠実であり、范閑を最後まで支援する。息子を北斉から帰還させてくれた范閑に感謝している。

【東夷】

四顧剣(四大宗師)

四大宗師の一人。東夷の最高指導者。彼の存在が東夷の独立自治を可能にしている。(慶国は直轄を望んでいる)。いつも「バカ」呼ばわりされている。それは、子どものころから変わり者だったことから来ている。10代の葉軽眉が東夷で、蟻をひたすら眺める少年に出会う。これが後の四顧剣で、有力者の息子ではあったが、母の身分が低く疎んじられていた。その集中力を評価した葉軽眉は彼に武術を指導し、大宗師に導く。(「四顧剣」を伝授)。その後自分や母を疎んじたことへの復讐のため一族を虐殺。清濁併せのむ存在。

常に東夷の独立保持を目標にしており、范閑の元に最後の弟子である王十三郎を送り腹心とする。(同時に北斉にも独自のルートを開拓する)。葉軽眉に恩義を感じており、東夷の運命を范閑に託す。(慶帝との決戦で重傷を負うも、少しの間生き延びて後事を范閑に託して死亡)。

雲之澜

四顧剣の一番弟子。ドラマでは第二季最後に「釣り人」として登場。范閑を警戒していたため、師父が范閑に後事を託したことに不服だった。しかし、その遺命には従った。

王十三郎(ドラマ二季までは未登場)

四顧剣最後の弟子。他の弟子にも知られていなかった秘蔵っ子。武功は最も高い。後半の重要人物の一人。四顧剣は、彼を范閑の元に送り護衛として協力させた。范閑を狙った燕小乙の息子を返り討ちにした。魅力的な青年で、最後まで范閑に従う。葉霊兒を愛している?かも。

【北斉】

司理理

本来の姓は李で、排除されたかつての慶国皇室一族の子孫。北斉に亡命し、慶でスパイ活動をしていた。(表向きは技芸として)。范閑とは相思相愛だった。范閑の取り計らいで北斉に帰った。後の北斉皇帝の妃。

斉皇帝(戦豆豆)

ドラマでは明らかに男装の女性。原作ではずっと男性(少年皇帝)として描かれる。范閑は後半でようやく彼が女性であることに気づく。北斉には後継男子がいなかったため、男性として極秘に育てられた。当初から范閑の著作のファンだった。有能な皇帝であり、范閑の支持者である一方で、北斉の利益のためなら范閑を危険にもさらす冷酷さも持ち合わせる。

東夷をお忍びで訪問した際に、同じく東夷を訪問中の范閑との間に一女紅豆飯をもうける。(非常に情熱的な女性でもある)。対外的にはあくまで皇帝は男であるため、司理理が(形式上)妃とされ、生まれた子どもも彼女との子とされた。

海棠朵朵

北斉の聖女。武芸は大宗師意外では最高位の一人。最も范閑との関係が深い女性。「顔は普通で田舎娘、ポケットにいつも手を突っ込んでいて歩き方が特徴的、空のように美しく澄んだ瞳を持つ女性・・・」などと描写されている。

彼女は各地を旅していて見聞も広いため、范閑とも深い話が可能であり、彼を孤独にさせない人物だと言える。最初はまったく異性としては意識していなかったようだが、原作で范閑が北斉を去る場面では、范閑の別れの抱擁のあとに顔を赤らめている。また、二人寝床に入ってこの世のことや哲学的な深い会話を一晩中する場面もある。原作で范閑は、海棠に「自分の妻になれ!」(一夫多妻の世界なので)と言うが、お互いの立場がそれを許さなかった。范閑は、「自分以外の誰とも結婚しないならいい」などとも放言している。

基本的に男女関係はないが、やはり深い感情があるものと思われる。ただ、海棠は自分の置かれた立場や大義を大切にしており、その点では二人の間に大きな違いがある。原作の後半で、遙か北方の神廟に共に旅をした際には、深い信頼関係があることを再確認している。最終決戦で自らを盾にしながら范閑を守り続けた人たちの一人でもある。

原作の終わりには彼女は草原にいる。范閑は海棠が娘に贈った品をみて昔を思い出すが、幼い娘は(おませさんなので)その父の気持ちを察して、「海棠おばさんはまた会いに来てくれる?」と尋ねる。それにたいして、范閑は「草原に疲れたら、きっと会いに来るさ」と答える。

苦荷(四大宗師)

四大宗師の一人。元の名を戦明月といい、北斉の皇族で守護者。海棠の師父。若い頃、前王朝北魏皇帝の命で肖恩と北に旅して神廟を発見した。これまで神廟を見たのはこの二人だけ。その際に神廟から出てきた葉軽眉に出会い、「天一道心法」を授けられる

元は前王朝北魏に仕えており、彼の兄は北魏の元帥だった。国事を省みない王を廃して、兄は北斉を樹立。大宗師となった弟苦荷は国の守護者となった。特に現在の未亡人皇太后と遺児である皇帝を守り続けている。范閑は苦荷を現世でいうところの「出家者」や「僧侶」と表現している。

ただ、苦荷には汚点があり、それを知る肖恩を度々暗殺しようとしている。聖人として知られた苦荷にはこのような暗い面もあった。(ドラマ第一季で肖恩が述べている通り、神廟を発見した北への旅での出来事が関係している)。

北斉は慶国と敵対状態ではあるが、最後は范閑に運命を託し、海棠を派遣。范閑の要請により范若若を弟子とする。慶帝との決戦の際に落命した。

肖恩

北魏(現在の北斉)では諜報部門を率いていた。庄墨韓は実の弟。彼を脅威と感じた慶国は、肖恩の息子の結婚式の際に彼を襲撃し捕縛に成功する。以来数十年慶国に虜囚の身になってきた。

しかし、北斉で諜報活動中の言冰雲が長公主のリークで捉えられたことから、捕虜交換で北斉へ帰還することになる。しかし、北斉においては肖恩の存在は非常に微妙なものであり、彼の味方は、弟の庄墨韓と義子上杉虎ぐらいだった。大宗師苦荷にいたっては、肖恩の帰路を襲うように弟子の海棠に命じるほどだった。(これは范閑によって阻止)。苦荷が彼を狙う理由は、若い頃に苦荷と共に神廟に旅した際に、苦荷の「暗部」を知ったためである。捕虜交換で北斉へ帰還するが、途上で襲われ死亡する。死の際に、范閑に神廟の秘密や葉軽眉のことを告げる。

庄墨韓

肖恩の弟。「武」に秀でた兄とは対照的に世界的に有名な文人。(姓も違うので二人の兄弟関係を知る人は少ない)。二人の兄弟の間には深い絆があった。

庄墨韓は兄を救出するために慶の長公主と手を組んで范閑を攻撃したが、逆に自らの名誉を失う結果になった。庄墨韓は長公主に利用されたことに怒り、「范閑は神廟が慶に使わした天脉者に違いないのに、なぜそれを敬わず攻撃するのか?」と詰め寄るが、長公主は「私はそんな伝説を信じない」と応じた。(原作のみ)。庄墨韓は范閑を高く評価し、貴重な蔵書を范閑に遺贈した。それに対し范閑も深い謝意と敬意を表明した。北斉は慶よりも文に優れた国家であったため、北斉の学者が范閑に蔵書を贈ることは重要な意味があった。(天下の文人たちが范閑や慶国を評価するようになった)。

総まとめ

以上、長々と考察を重ねて参りましたが、『慶余年』については以上としたいと思います。原作と比較して、第二季までの内容はいくつか不満がありましたが、ドラマ第三季がどのようにアレンジされるのかを楽しみにしたいと思います。(演者さんの年齢を考えると、時間との闘いですね)。

『慶余年』という物語は、葉軽眉が残した優れた遺産を范閑と世界が受け継ぐ一方で、彼女が残した負の遺産「四大宗師」が消えて行くという話でもありました。ただその結果、今度は范閑が武功・権力(影の)・富において物語世界最強になってしまいました。前回のレビューで取り上げた、父娘の会話の場面は、物語の最後ではありますが、彼はまだ非常に若いのです。三皇子を皇位に就けて隠棲したとはいえ、まだ世界に厳然たる影響力を持っていることが強調されて原作の話は終わります。

若い范閑は残りの人生をどのように過ごすのでしょうか。今のところ范閑には野心がなく、彼の行動理念は「既来之則安之」なので、きっと、自分と親しい人たちの平安を目標に生きて行くのでしょう

そして、ドラマの第三季はどんなアレンジになるのでしょうか。また原作小説とはちがった工夫がなされると思うので、楽しみにしたいと思います。

以上、数回にわたって冗長な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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