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大河ドラマ「光る君へ」第8話感想

源氏物語絵巻橋姫 光る君へ

引き続き、「天邪鬼」な大河ドラマ感想を綴って参ります。基本的に批判的精神でレビューしておりますため、不快に思われる部分があるかもしれません。前もってお詫びいたします。

第8話「招かれざる者」感想

いろいろ情勢も動き始めて面白くなってきました。

病と陰陽師

兼家病臥の場面では、(今で言う)迷信的な昔の慣習などが描かれて良かったと思います。ただ、そのあたりを笑いで(面白く)描こうとする傾向があるので、若干違和感はあります。

今回安倍晴明や医師が兼家の病気について語っていますが、以下の本「平安貴族と陰陽師: 安倍晴明の歴史民俗学」が個人的には参考になりました。

平安貴族と陰陽師: 安倍晴明の歴史民俗学平安貴族と陰陽師: 安倍晴明の歴史民俗学
繁田 信一
吉川弘文館
2005-05-01


当時の陰陽師、験者、医師のそれぞれの役割分担などが詳しく論じられています。(他にも住宅の「魔除け」などについても)。治療の本質が、病人の体から魂が遊離してしまわないようにすることだったとするのも面白く、今回のドラマのシーンともリンクして興味深いです。医学的な治療と呪術的な治療が混在しつつ、役割分担もしていた時代を安倍晴明を通して調べて見るのも面白そうですね。

直秀さん

直秀さんも引き続き登場。偽りの兄弟設定ですが、実は本当に庶出の子というような設定も面白そうです・・。

ただ、今回の展開はどうも不自然。道長は、矢傷の時点で既に疑いを持っている上に、家の案内までさせたとなれば、当然直秀が何をしようとしているのかは明白なはずです。にもかかわらず、みすみす盗賊の侵入を許すのがまず不思議です。直秀側も、矢傷を疑われていることは分かっているのに、邸宅内をわざわざ案内させ、その上で盗みに入るのは、捕まえられる前提でやってきたとしか思えません。何か深い意味があるのでなければ(ただ盗みに入って捕まっただけなら)、二人はあまりに愚かですし、直秀は仲間達の命を顧みない無謀な人物ということにもなります。これは次回明らかになるでしょうけれども。(なるのだろうか・・)。

父為時のキャラ設定

あと、為時のキャラ設定なのですが、個人的には初めからなんとなく違和感があります。もちろん、「いい人」な感じは大変好印象でもあるのですが、紫式部のパーソナリティ形成に強く影響を及ぼした人物なので、違和感があるのです。今のキャラは、「政争を好まず出世も積極的には望まない」という感じがしますが、実際は非常に出世欲があった人だと思います。一本気で社交的ではなかったようですが、それでも文人としての高いプライドがあり、自分は出世して用いられる人材であるという自負は持ち続けたと思います。(後の越前守就任の事情も考えると)。ドラマの設定は、あまりにいい人で優柔不断にも思えます。(ちょっとうまく言い表せないのですが・・)。

為時についての違和感は、道兼とのシーンでもありました。道兼は為時に近づくため、家を訪問したり感情を吐露したりして接近を図ります。ここで大人の対応をした「まひろ」は素晴らしかった。ただ、一方の父為時は、その後なんと情にほだされたのか(政治的に花山帝の見方を増やせると考えたとは思えない流れ)、道兼のために花山天皇の前で一肌脱いでしまうのです。話を劇的にするためでしょうけれども、やはりこれは人間の心理描写に無理があると思います。

学識と高いプライドを持つと同時に、内省的でもある紫式部の人格は父為時の人格と深い関係があると思うので、今少し為時の設定を考えていただきたいです。もちろん、これは(私の勝手な)本当に微妙な違和感なのですが。

ちなみに、この後「寛和の変」で為時は失職し10年間散位として不遇の時代となりますが、今回の大河の歴史考証倉本一宏氏は、為時が紫式部に対して「この子が男だったら」と嘆いたのはこの時だっただろうと解説しています。(「紫式部と藤原道長」p45)。つまり、この失職中の10年の間に娘に漢籍の知識を注ぎ込んだだろうということです。「源氏物語」に引用される漢籍の豊富な知識も、この長い独身時代に吸収されたようです。

ドラマではこのシーンは「まひろ」の子役時代に出てきました。しかし、このような背景を考えると、そのタイミングでの台詞では意味がないことがわかります。とはいえ、第八話現在の「まひろ」は実は13歳(!)ぐらいの設定になるようなので、まだ「子ども時代」とも言えます。ただ、ちょっと子役からの切替が早すぎた気はします。(一応生没年不詳ではありますが)。

そして黒木さん・・

それにしても、黒木さんの倫子ははまり役ですね。雰囲気といい演技といい素晴らしい。今後の「まひろ」との関係がどうなってゆくのか楽しみです。


▼ちなみに藤原だらけの大河用に、藤原家系図を作ってみました。権利の関係で俳優さんの写真は使えませんが、ご参考までにご覧下さい。

「かなふみ」サイトで、作ってみた・・。

NHKの公式サイトに、平安時代に使われた仮名74種類を入力すると、カードが作れるという企画がありました。

一応我がブログのタイトルの出典「五雑俎」にある「雨過天青、雲の破るる處」を平仮名(変体仮名含む)で入力してみました。あまり自由度が高くないので、満足行く出来にはなりませんでしたが、ちょっとしたお遊びにはいいのではと思います。

使う仮名は、とりあえず見た目だけで選択してみました。こういう企画も楽しいですね。(下部のクレジットがなければもっといいですが)。

今回は、(内容が薄いですが)このあたりにしたいと思います。お読みいただき、ありがとうございました。


紫式部と藤原道長 (講談社現代新書)紫式部と藤原道長 (講談社現代新書)
倉本一宏
講談社
2023-09-20